昔話
むかーしむかしあるところにのおはなし
①
むかしむかし、はるかとおい異国の地からとある鬼の夫婦がキタカミにやってきました。
夫婦は村の外れに家をたてすみつきました。
村人たちは鬼をおそれて夫婦のすみかにちかづきません。鬼の嫁はさみしさに涙をこぼします。
鬼の夫はその大きな背をまるめてちいさくなり、毛むくじゃらの手足を着物で、青いひとみは長い髪でかくして、人間の姿をまねて村人へ話しかけようとしました。
「だれか我が家にまねかれてはくれないか、おいしいごちそうも、あたたかな着物も、たのしい書物もある。私の妻と仲良うしてくれないか。」
村人たちは遠巻きに見ているだけ、鬼の夫のすがたはそれほど皆とちがっていて、使う言葉も違っていたのです。
そこにひとりの学者が声をかけます。
「もし、では私に異国の話を聞かせてはくれないだろうか」
ひそひそ、ひそひそ。あぁ怖い。あの男は鬼に食われてしまうよ。村人たいはささやき合いました。
男はそれをものともせず、ぼろぼろの本を片手にたどたどしい異国の言葉で鬼にはなしかけます。彼は村の外ばかり気にして祭の支度もしないなまけものの学者でした。
よろこんだ鬼の夫は学者を家にまねき、できるかぎり豪華なもてなしをします。泣いていた妻も笑顔をとりもどし、学者一家と鬼の夫婦はいつしか親友になり、いつしかおたがいの子供がまた夫婦となり、家族にもなったのです。
鬼の夫婦は学者とその子供達にたいそう感謝し、村をさかえさせる力や知恵をあますことなく与えました。そうしていくうちに噂が広がり、村を守ってくれるやさしい鬼だと、村でもうけれいられるようになったのです。
②
いつしか村いちばんの長者になった学者一家は、鬼の夫と協力して鬼の妻に贈り物をこしらえました。鬼の故郷の宝をキタカミの力で磨き上げつくった4つのたからものに、鬼の妻は涙を流してよろこんだといいます。
月日は流れ、学者も年をとります。
しかし不思議なことに、鬼の妻はいつまでも若々しく美しいままです。
「妻は私とはちがう。しかしとてもさみしがりで泣き虫だ。どうか私がいなくなった後も村の皆でまもってあげてほしい。」
老いた鬼の夫は子供たちを集めてそう願います。鬼の妻はむじゃきに笑うだけです。
「私が去っても、憎んではいけない。恨んでもいけない。たからものをたいせつにして、やさしく生きていくんだよ。」
そうしてまもなく、鬼の夫は死んでしまいました。鬼の妻はわんわん泣きましたが、彼がいった言葉を思い出してたからものと夫がのこした子供たちを抱きしめます。
長い時が過ぎ、鬼と学者の子供の子供、そのまた子供が大人になり、老い、死んでいっても、鬼の嫁はいつでも若く美しいままでした。
「あぁ不気味だ、いつまでたっても変わらない」
「やはり鬼は鬼なのではないか」
ひそひそ、ひそひそ。むかしむかしの村人のような冷たい言葉がよみがえります。子供の子供のそのまた子供、ずっと後の子供たちが鬼とみられることを恐れた鬼の嫁は、村の長者の屋敷から最初に移り住んだ粗末な岩穴の家に居をうつしました。そこで人知れずやさしく暮らそうとしました。
③
【キタカミの里には怖い鬼がいる】噂を聞きつけたある都のお侍は、不憫な村人をすくうために鬼退治の旅に出ます。道中3人の仲間を得て、鬼のちからのみなもとといわれるたからものをうばいました。
たからものを奪われた鬼の妻はかなしみ、いかり、とりもどすために村中であばれました。
あぁ、鬼がいる。なんと恐ろしい。
村人たちは逃げまどいます。
「どういうことだ、力のみなもとをうばえば鬼をたおせるのではないのか。」
お侍はひっしに暴れる鬼とたたかいます。鬼の嫁も、夫が残したたからものをとりもどそうとひっしで、共に血を繋いだ長者の一族の者の話すら聞こうともしません。
あぁやはり鬼は鬼だったのか。
学者の子供の子供の、そのまたうんと子供の当代のあるじはかなしい気持ちになりました。そしてこのばばれくるうかなしい鬼を眠らせなければ、とこともあろうかお侍に協力したのです。
ながいながいたたかいの末に、鬼の妻はちからつき、お侍の刀の前に倒れます。3人のお供はお侍を守って息絶えていました。
鬼の妻はしくしくと泣きながら次第に小さくなっていき、お山の奥の洞窟で物言わぬ岩になりました。
こうして鬼の妻はキタカミを襲った悪しき鬼にされ、お侍とおともたち、彼らに協力した長者の一族は村を鬼から救った英雄とされたのです。誰もかたりだがらない村のほんとうのお話はここでおしまい。
だれにとってのめでたしなのかは、だぁれも知らない。
おしまい
オーガポンと共にキタカミに渡った鬼の夫は、時空水晶の力で並行未来から来た大穴の研究者。制御装置に使った時空水晶は彼の生きた時代の大穴にあったもの。
大筋の流れがこれとして、これを己が都合の良いように脚色して伝わっている各地の解釈
●村の民話(村人)
役割:真逆の歴史を語り継いでいる
鬼の夫婦がやってきた
→なまけものの学者がかくまった
→鬼は学者を喰らって成り代わり、村の長者になった
→お侍様が鬼退治をしてくれ、食われた学者は腹から飛び出た
→めでたしめでたし
→侍=黒曜の家系、学者=赤鉄の家系
よって鬼は悪であり、救世主を長として崇め、村に害悪を持ち込んだ異端者の家系を漠然とした差別意識で扱っているところがある
●黒曜家の解釈(お面職人・ある男)
役割:鬼をキタカミに招きお面を作る・正しい歴史を知りながら隠蔽する
鬼の夫婦がやってきた
→自分の家と友情を結んび血を混ぜることで村を統べる力を与えられた
→鬼の異端の力を恐れる村人を制御できず
→分家子孫の一人が鬼を追い出そうとするも失敗
→結局村全員で鬼を追い出し分家子孫一人に責を背負わせる
→贖罪として村と世界を守るために身を削るべき
鬼は友人から悪に転じてしまったものだが、悪にした原因はこちらの血筋にある。ただそのことは村民に言えない。また分家がともっこを作り出し制御装置を奪ったのは彼の独断のように伝えられていて、黒曜は本家が命令してやらせたこととは知らない。
一族の負の遺産として代々家の後継者に真実を口伝してきてるけど、無駄に血筋に罪悪感を植え付けるそれを黒曜は自分の代で終わりにして息子孫を自由にさせたい気持ちもあっての映画版なのかなぁ。
●赤鉄家の解釈(お面職人+モモワロウ)
役割:鬼に負けたことで鬼=悪の構図を産む、外国から来、犬猿雉を連れて鬼を襲い仮面を奪う
一連の鬼移住の後の世、村の外れに棲む鬼が脅威
→本家の命を受けてパルデアに渡り、鬼の対策を探す
→海底ロストテクノロジーで技術を得、毒の鎖を開発(これ後のパラドックス怪人による現代人古代怪人化の技術にも似たもの)
→村に戻り、3人の負の感情が強い外れ者を実験体に→ともっこ怪人
→3人の怪人とコーガで鬼を倒そうとするも失敗
→制御装置(宝物)を失ったオーガポンが兵器になり村が混乱に陥る
→3人の怪人と己の命を禁呪で本家の当時タイショウに吸わせ、鬼を封印
→タイショウ・コーガ・ともっこ怪人の英雄的情報操作
→発端が本家の密命なことを知らないコーガの子孫たちは、勝手な考えで争いを起こし村を危機に陥れた責を背負うことになる
己のルーツを隠れて調べてた赤鉄は先祖の所業と本当に悪いのは誰かはなんとなく知ってる気がする。諍いを持ち込んだ愚か者の血として村内で差別されてる血族だけども、真実は本家の密命で動いたことまで。しかし己の命も使ってオーガポン消滅に加担しようとしたということはそれだけ黒曜を慕っていたに他ならないと思う。
●ポンちゃん(オーガポンと男)
役割:君らは移住したかっただけで何の罪もない
パラドックス怪人の手を逃れて移住先を探す古代兵器と研究者パルデア人
→極東での外国人は化け物扱いを受ける
→周囲に溶け込むきっかけをくれた黒曜家に外国の技術と時空水晶の変身能力を分ける
→人とは時の流れが違うオーガポンを子孫たちが畏れ隔離
→伝承が曲がって伝わり危機感を募らせた子孫の一人からオーガポンを人に擬態させる制御装置を奪われる
→兵器が暴走、多数の被害
→キタカミで暴れる鬼伝説にされる
→変身能力を受け継ぐ子孫たちからフルボッコ、封印、人を憎む
→パルデア人の夫は寿命で亡くしている、奪われたのは彼の残した制御装置と血を繋いだ子供
→それでも夫を愛した気持ちから1%ほどは信じる心があり、それがポンちゃんになる
●海底古代人の関わり
・上記の通り赤鉄の先祖はオーガポンへの打開策を求め海底古代人の技術を用いて毒の鎖を制作している
・その研究を行ったのが海底古代人テクノロジーの施設、後のRYU_GUである
・オーガポンを用いて大陸破壊を阻止したい海底古代人は、赤鉄の先祖を利用した形になる
・旧RYU_GUで技術を学んだとされるが、この時点で彼が海底古代人によって何らかの洗脳、肉体改造を受けたのは間違いない(モモワロウ)
・毒の鎖はオーガポンを消滅させるための尖兵を作る海底古代人の策略
・オーガポンはこの暗躍に気づいており自分の子孫たちを洗脳し計略にはめ破滅させようとしたRYU_GUの者たちを許していない
・パラドックス怪人=人々を怪人にする非道と扱われているが、実は海底古代人もRYU_GUで同等の行いをしていたことは後編で明らかになる
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