チャシとアトゥの話
チャシはアトゥのことが好きか嫌いかで言ったら最後までずっと嫌いなんだろうなという話。
多分崖から落ちそうになってもいい笑顔で木の棒でつつくし、隙あらば勝手に死なないかと雑に扱ってる。自分の目的に必要だから構っているだけで本当は一緒にいるのも億劫でついてけないけど、横にいなきゃいけないからマジで仕方なくいる。おうち帰りたい。
嫌いと憎いの意味は違うので、ニトゥイエに対してもそうだけど自分から執拗に追い詰めて殺したい憎しみはない、けどその場で弱ってたらやっほぅ!死ね!する程度には嫌い。そんな感じ。良くも悪くも自分とは全く違う度し難く受け入れがたい別の生き物だと思ってるね。
アトゥがああ見えてド根性ダイケンキなので、雑に死んでくださーいされてもコンチクショーーー!と這い上がってくるし、そのたび舌打ちはされるが強くはなっている。そしてアトゥ側から見れば自分はチャシのことを信頼してて好いているし、有事の際は連携ばっちりできるニコイチ主従だと思い込んでる。死にかけてたら喜んで寝首かきたがられてるとは気づかずに。結構面白い関係。
じゃあなんでそんな嫌うのかっていうと根底にあるのはきっと劣等感。ドブ川が清流を眺めてああは成れないと思ってる感情が根元にあると言っていい。
アトゥはああいう外見でも根っこはヒスイの男だし、自然と純朴な民族の厳しいけれど優しい世界で生きてきてる。砂の手から海を挟んだ海岸集落(シシンタのとこ)はその純朴さが妄信になってドス黒い差別社会が産まれてるけど、アトゥの生きた漁村は自然を生きることを前提として伝統を守ってひっそり生きており、生まれも育ちも集落である普通の子のアトゥはあんまり人間の持つ害意に触れず育ってきたんだよね。過疎化が進む中貴重な子供だったし。だからどんなに邪険にされても人間であれば分かり合えるし根っこは優しいと思う、善意を与えられたら裏を疑わずに善意で返す。きっと人の死だって自然災害や寿命でしか見たことないだろうし、人が人の欲のためにどれだけ残酷になれるかを知らない。欲を出して突出した人間は大自然に淘汰されちゃうからね。厳しいけど清らか、真冬のキンキンの清流みたいな世界で生きてる。
人間よりずっと強大な「自然」と戦ってきたという背景があるからだろうけど、人間関係構築は本当に世間知らずのお坊ちゃん。清らかなのよ。
対してのチャシはヒスイに招かれた経緯から人間の悪意の煮凝りみたいなとこに晒されてきたし、順当にミケオンカミに命じられて汚いこともしてる。人の欲がどれだけ他人を踏みにじれるかを身に染みて知っている世界で生きてんだよねこっちは。今更人間の性根が善で美しいと信じられないというか…元々信じてないというか。ドブ川でドブ啜って生きてきた性格の悪い男にとってあの清流みたいな性善説お坊ちゃんの隣でご高説を聞くのはかなの苦痛だと思う。だから嫌い。うん、順当。
彼の過去とか生い立ちは主人公でもないのになんでこんなに鬱なの?!?!ってまとめようとする度ブレーキ探してるからなんかうまくまとまらないんだけど
・ヒスイ地方に化石種は野生で居ない、時空の歪みから調達するしかない
・化石→復元→時空の歪み→ヒスイと2度時間と空間を超えた化石種は、ヒスイではその血統に特殊な能力を持つ
・別時代から厳選調達された彼らにはヒスイで繁殖する手段がない
・子供の状態で次々呼び出され酷使され、力が無くなったら「血」を合併させて捨てられる消耗品である
・寺院の下のカタコンベには、そうして捨てられた大量の化石達の遺骨が投げ捨てのように積み重なっている
・先代の「チャシ」は今のチャシの妻だった
・血の迎合の為チャシを殺し喰らうのは次のチャシである
・チャシはミケオンカミを手計り寺院地下でチャシになる能力が無かった廃棄物の化石の子供達を匿い育てている。
これくらい情報出してなんとなくどんな生き方をしてきたか察して欲しい。寺院編でミケオンカミを惨く殺した背景とかも。タイムトラベル先で幸せになったラヒと比べて攫われ使われ殺される生涯の方がエグいかもしれん。
あーーバカ上司ーー腹立つーーーーって思いながらも物理的にぶん殴る人間のドロドロした汚いとこを見せて絶望させることは(寺院編で一回やったが)もうしないあたりで小さじ一杯分くらいの情はあるのかもしれない。もしくはああいう清い生き方を羨んでる気持ちがあるから、そこは変えたくはないのかも。やっぱり不思議でちょっと面白い主従関係だなこいつら。畳む
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